December 07, 2016
aeg エッグ@白金
秋に白金にOpenした「aeg(エッグ)」に行きました。
女性シェフの辻村さんは、以前六本木でデンマーク料理のお店をやっていた方で数年前にデンマークへ。
オーデンセのパン屋やコペンハーゲンの三ツ星レストラン「Geranium」にいらして、2年前にはgeraniumの厨房でお会いした事があります。そこでお話した時には、いずれ日本に戻ってお店を開きたいと思っていますと言っていたので、今回の訪問は楽しみにしていました。お店のロゴも卵みたいで可愛い。
地下へ向かう階段の踊り場には、アンデルセンの人魚姫の像のレプリカが置かれています。
扉を開けると、隠れ家的なバーのような雰囲気で、カウンター席があります。
カウンター席の後ろには、大人数用のテーブル席もあります。
壁には毛皮が飾られています。
Michel Arnould Grand Cru
まずは、シャンパンを頂きました。ブランドノワールと表記していませんが、ヴェルズネイはピノノワール産地ですからねピノノワール100%。果実味のボリューム感と優しい酸です。
ふとテーブルを見ると、ココット鍋が置かれていました。
蓋を開けると焼く前のパン種が入っています。
辻村さんは、デンマークのオーデンセのパン屋でも修業されていたので、これから焼きますというパンも楽しみ。
料理のコンセプトは、ノルディック&ジャパニーズ・キュイジーヌだそうで、日本に帰ってきてから各地の生産者を回り、日本の食材や器を使った料理を自分なりにアレンジしていきたいとのこと。
カウンターの棚には、とっくりやぐい飲み、土鍋、竹かごなどが置いてあり、これからどんどん和食器を増やしていきたいそうです。
菊芋 モルト
木くずの上にのせてあるのは、落ち葉の形をした2色の菊芋のチュイル。
その下には、枝のような形をしたモルトのクラッカー。
私が秋にデンマークに行った時は紅葉の時期でしたから、そこから少し寒くなり、枯れ葉が落ちる光景を表現しています。
和牛のクロケット
黄色いイチョウの葉が敷かれた木のお皿には、楊枝に刺した一口サイズのクロケット。
和牛挽肉の赤ワイン煮込みを、イカ墨を練りこんだパン粉で揚げて、吉田牧場のラクレットをのせて。
白菜
芯のまま焼いた白菜。その上には、麹で発酵させた卵の黄身とへしこのパウダーをのせて。
中央には、鶏のコンソメとほうれん草のピュレ。ニンニクを利かせて、このピュレに付けながら白菜を頂きます。
デンマークでは、秋から冬にかけて乳酸発酵のソースやビネガーを使うことが多いですが、日本では麹という発酵食材がありますからね、へしこのパウダーというのも面白いです。
Gruner Veltliner Liebedich 2014 Veyder Marberg
オーストリアの白ワイン。かすかな甘口とすっきりした酸で、白菜の芯の甘みを感じさせてくれます。
牡蠣・さざえ・マテ貝
貝は3種でてきました。
厚岸の牡蠣は、ヨーグルトの上澄み液とエルダーベリー、ローズヒップのオイルビネガー。
ミルキーな牡蠣にヨーグルトの酸味とフルーティーなビネガーの酸味。ゼラニウムでは季節によってハーブやお花が変わる定番の一皿でしたね。
姫さざえは、赤ワインとダシとスパイスで煮込んだそうです。
マテ貝は、ゼラニウムでも記憶のあるマテ貝もどき。
これをキッチン見学の時に辻村さんが出してくださったのを覚えています。
精巧にできたマテ貝の殻に見立てたものは、マンニトールで作っているんだったかな。
帆立のタルタルとディルと国産レモンの皮を合わせたものをはさんで、殻もそのまま食べれます。
卵
卵のように丸い石の器が出てきました。
蓋を開けると、香茸のムースの上に、仔牛と若鶏のコンソメのゼリー寄せに温泉卵をのせて。
上には、香茸のパウダーをかけて。ぷるんと半熟の卵にコンソメや茸のフラン仕立てのムースが美味しい。
そういえば、aeg(エッグ)という店の名前はどうしてつけたのですか?と聞いたら、aegは、デンマークでも卵を意味し、この“aeg”という名前にこれからもいろんな料理が『生まれる』という想いを込め、店の名前としましたと。
なるほど、そんな想いをこめたこの一皿の中からもシェフのこだわりが伝わってきますし、卵を使った料理はいろんな形で出していきたいとのこと。
Domaine Gauby Cotes Catalanes 2013
ゴビーは赤が優秀だけど、白もふくよかな果実味です。
森
森をイメージしたというお皿は、日本料理でいうと八寸をイメージしているのかな。
木の板の上に、白苔やトナカイの角などをあしらった演出です。鹿、馬、熊、フォアグラなど森沢山。
トナカイの角の上には巣篭り卵に見立てた、フォアグラのムースとフランボワーズのゼリー。
ホワイトチョコでコーティングし、ローズヒップのパウダーをのせて。
最初に出てきたパンがふっくらと焼きあがっています。
ライ麦や酵母の香るパンは熱々、皮生地ももちもちと柔らかいので、食べやすいのがいいです。
これにパテをつけたりしながら・・・
長野伊奈鹿のレバーパテはかなりくせがありますが、パンにつけたり、ちびちびなめながら赤ワインと合いそうな。
モルトとカカオパウダーのパイ生地には、月の輪熊のリエットと自然蜂蜜をはさんで、ハーブのパウダー。後で聞くと徳山鮓に通っているそうで、月の輪熊のローストも食べたいなあ。
熊本馬肉のタルタルのカナッペは、赤身のタルタルとカルバドスで漬けた雲丹、マスタードのスプラウトをのせて。これが旨かった。カルバドスで漬けた雲丹はミョウバン臭さが気にならなくていいです。
そういえば、雲丹もデンマーク近海では獲れるみたいですが、地元ではあんまり食べてないそうです。新鮮ならきっと美味しいだろうに。
Marsannay Blanc 2014 Philippe Naddef
甘鯛
朴葉の蓋を開けると・・・
山口の甘鯛の鱗焼きは、春菊や葱、百合根を添えて。シャルドネワインを使って甘鯛のフォンをとったそうです。
この辺から少しづつ和のテイストになってきました。
Savigny les Beaune 2012 Seguin Manuel
旨みがある優しいピノ、タンニンや酸味も優しいです。
鹿
伊奈の仔鹿のロースト。焼き茄子のピュレと牛蒡のフリットをのせて。
椎茸、むかご、里芋、、枝豆、ロマネスコに、香茸と山椒の実を煮込んだ赤ワインソース。
山椒の実は春に徳山さんと山で採ったものを冷凍保存しておいたそうです。
香茸や山椒の香りが、鹿のジュと合わさり美味しいソースです。
ちらし寿司
わっぱの蓋を開けると琵琶ますを使ったちらし寿司。
まだオーダーした器が出来上がっていないので簡易的なものですがとおっしゃっていましたが、この中には、赤酢のシャリを敷き、琵琶鱒(これも徳山さん経由で仕入れたそうです)、宮崎の穴子、いくらをのせて。
白いソースは昆布出汁と山葵と乳清のソース。お花やハーブを散らして。
赤酢のシャリも通っているお鮨屋さんに教えてもらったそうですが、勉強中とのこと。正直この具材に合うにはまだまだかもしれません。シャリって一番難しいですからね。
合わせて出てきたのは、茸のスープ。
シェフが長野で採ってきた天然茸がいろいろ入っています。
茸の旨みたっぷりの温かいスープにほっとします。
デザート
チーズのタルトにルバーブのジャム、酒粕のフォナンシェ。
桜の枯葉の下には、紅玉のアイスクリームに沖縄黒糖のかりんとう。
赤すぐりとレモンバームのジャムを添えて。
地下の隠れ家的なバーのようなカウンターで出てくるお料理は、前半はデンマークのガストロ的スナックから始まり、ゼラニウムを思い出す料理もありながら、後半は和食をイメージするようなノルディックとジャポネのキュイジーヌ。
日本に帰国してからいろんな生産者を回りながら、自ら茸を採りに行ったり、日本の食材やジビエと体面し、北欧と日本のそれぞれの自然を表現する料理を作りたかったのだとか。たまたま徳山鮓のお話をしたら意気投合。 熊や鹿、琵琶鱒、山椒など、貴重な食材もその道筋から仕入れているのだそうです。
北欧モダンなフレンチテイストのお店が話題に上っている中、デンマークでの経験をもとに、日本の食材と発酵食品などを組み入れたシェフのお料理は、まだ粗削りな部分が多いですが、温かみがあり、また違った路線で面白いです。自然派ワインのペアリングと共に修業時代のお話や料理談義を聞かせて頂き楽しい時間でした。
デンマークで感動したニシンのマリネのお話をした時に、うちでも自家製のニシンのマリネを作りますって言ってたので、次回はそれも楽しみに、また伺ってみたいです。
「aeg(エッグ)」
東京都港区白金台5−3−2 ジェンティール白金台B1F
03−6277−1399