April 04, 2019
オーベルジーヌ@笹塚
「オーベルジーヌ」に行きました。
かつて東京芝に「オーベルジーヌ」というフランス料理の名店がありました。
1989年に芝にオープンし、そこでオーナーシェフとして活躍していた小滝シェフ。当時私はまだ中学生だったので、行ったことはありません。大学生になり東京に上京して社会人になってから2005、6年くらいに1度だけ連れて行ってもらったことがありました。とても美味しくて再訪したいと思いながらもその後、茨木常陸太田にも支店ができてからも、再訪する機会がないまま閉店してしまいました。
その小滝シェフが世田谷区北沢の住宅街に昨年の夏からひっそりとお店をオープンしたと聞き、是非行ってみたいと思いながら、念願の訪問です。
京王線の笹塚駅、小田急線の東北沢駅から徒歩6,7分。
お店の入り口は夜だと暗くてわかりにくいですが、レンガ造りの壁に花のアーチがある門をくぐり、小道を抜けると扉があります。
小滝晃シェフは、24歳で渡独。ホテル・ニッコーからデュッセルドルフの「イム・シェフィエン」で2年余り修業。フランスでは、パリの「ラ・ムフレット」、アルザスの「オーベルジュ・ド・リル」で働く。86年に再びドイツに戻り、ミュンヘンの「タントリス」や星付きレストラン「オーベルジーヌ」などで修業。88年34歳で東京に戻り、翌年「オーベルジーヌ」のシェフに就任しました。
そこで30年近く腕を振る舞い、数々のスペシャリテを生み出しました。閉店して、数年のブランクを経てから、今はシェフお一人で限られた予約客だけに料理を作っています。
アミューズ
生ハムのパイ包み。
生ハムとパイ生地を折り重ねて、こんがり熱々に焼いた一口のパイ包みから始まります。
Sancerre 2016 Bonnard
ワインは、シェフのおすすめで、サンセール。
ソーヴィニオンブラン特有の青苦みは少なく、すっきりとした甘みとミネラル感です。
バゲットは、代田橋のブーランジェリー・コンヴィヴァリテのもの。
天然酵母を使ったクラムの香りがいいパンです。
小滝シェフは昔は自家製パンも焼いていたそうです。
ズワイガニと根セロリのテリーヌ 蟹味噌のムース添え サラダ仕立て
ズワイガニの爪と根セロリ、そのジュレを重ねたテリーヌに、蟹味噌のムースを添えて。
蟹爪の甘みと根セロリの甘苦みに、ふんわりと濃厚な蟹味噌のムースをのせながら、葉野菜のサラダは甘みと酸味が利いたグリオットチェリーのドレッシング。ワインのサンセールがすすむ冷前菜です。
スープ・ド・トリュフ
黒トリュフの時期はもう終わりながらも、入荷が可能ならば作ってほしいとお願いしていたトリュフのスープ。もう最後だけど、マーブルが白から黄色に熟成したいい香りだよと。
3ミリほどの厚みのトリュフから、漂う官能的な香りがたまりません。
そして、薄いグレー色のトリュフのスープは、フォンブラン、柔らかくなるまで煮込んだゆり根のピュレとトリュフの皮や刻んだものを共に攪拌し、最後にクリームのフォン。中にはさっとスープの中で温めたレアで柔らかな帆立が入っています。
いいトリュフならそれだけで旨味が出る。「香りがあれば塩はいらない」と名言。
ブイヨンを使うとその雑味が出てしまい、せっかくのトリュフの旨味が損なうと。
確かにその通りですが、それゆえにこんなに旨味があるスープが出来るとは驚きの一品です。
ゆり根のほのかな甘みとトリュフの滋味が合わさり、そこに浮かべた厚みのあるトリュフの香りが充満。
正直帆立はなくてもいいくらいに澄んだ綺麗な旨味なのですが、ほくっとした厚みのあるトリュフの食感に、帆立の柔らかな食感の対比が、それぞれを引き立てるように。これが当時からのレシピなのです。そして、スープは熱々ではなく、やや低めの温度の方がトリュフの香りが引き立つので、そのスープが冷めないように、クリームの皮膜で覆い、香りとコクのまろやかさを出すのだそうです。
当時はジャガイモとトリュフを合せたりしたけれど、日本のジャガイモだと甘みもコクもない。で、ゆり根で試してみたところ、ゆり根の甘みがトリュフの持っているいろいろな特質を引き出してくれると。
この一皿には、非常に感動しました。次回は、トリュフの全盛期に是非また作ってもらいたい逸品です。
鱒のスフレ ペルノーのソース 菜の花のソテー添え
伊豆下田の海鱒のスフレは、そのすり身で鱒を包み、オーブン焼きして、ペルノーのソース。
菜の花のソテーを添えて。
ふわっと柔らかなクネルのような鱒のムースの中には、しっとりとした優しい味わいの鱒が。
ペルノーの香るバターソースが品のいいこと。ここにも余分な味を加えるフォンは使わないそうです。
いろいろ伺うとシェフは下戸でお酒は飲まないそうです。だからこそ、香りを引き立てる酒使いが上手いんですね。
Cabernet Sauvignion 2017 Les Jamelles
赤ワインは、次の肉料理のソースを煮込む時に使ったカベルネ・ソーヴィニヨンを合わせてくださいました。
ランド産小鳩のロティ
皮目をかりっと焼き、ぶりっとした弾力感の仔鳩。そして骨や内臓などを、フォンド・ヴォーと前者のワインなどでこっくりと煮込んでから漉したサルミソースの美味しいこと。
添えたホワイトアスパラガスのローストは、ミディアムに茹でてから焼くと水分が抜けずにしっとりと仕上がるそうです。絶妙なソースはパンで拭いながら、ワインを一飲み。幸せのひと時です。
ライムのシブースト
19世紀にパリで考案されたデセールをアレンジして。
カスタードクリームとゼラチン、メレンゲを合わせたムーステリーヌに、ライムの皮と砂糖をキャラメリゼしたライムソースをかけて。
甘いものが苦手だというシェフが作るデセールは、ライムの香りと酸味を活かし、甘いものが苦手な私もすっきりと食べられます。
ミニャルディーズ
フランボワーズのパート・ド・フリュイとガトーショコラ。
コーヒーはネスプレッソ。
食後は、シェフの修業時代のお話や今まで作ってきたスペシャリテの料理などのお話をいろいろ聞かせてもらいました。シェフの修業時代のお話はほんとに興味深く、こだわりの食材を使ったお料理もまたいろいろ頂きたいです。
「オーベルジーヌ」
東京都世田谷区北沢5−15−6 シャリマール北沢1F
03−6416−8200
かつて東京芝に「オーベルジーヌ」というフランス料理の名店がありました。
1989年に芝にオープンし、そこでオーナーシェフとして活躍していた小滝シェフ。当時私はまだ中学生だったので、行ったことはありません。大学生になり東京に上京して社会人になってから2005、6年くらいに1度だけ連れて行ってもらったことがありました。とても美味しくて再訪したいと思いながらもその後、茨木常陸太田にも支店ができてからも、再訪する機会がないまま閉店してしまいました。
その小滝シェフが世田谷区北沢の住宅街に昨年の夏からひっそりとお店をオープンしたと聞き、是非行ってみたいと思いながら、念願の訪問です。
京王線の笹塚駅、小田急線の東北沢駅から徒歩6,7分。
お店の入り口は夜だと暗くてわかりにくいですが、レンガ造りの壁に花のアーチがある門をくぐり、小道を抜けると扉があります。
小滝晃シェフは、24歳で渡独。ホテル・ニッコーからデュッセルドルフの「イム・シェフィエン」で2年余り修業。フランスでは、パリの「ラ・ムフレット」、アルザスの「オーベルジュ・ド・リル」で働く。86年に再びドイツに戻り、ミュンヘンの「タントリス」や星付きレストラン「オーベルジーヌ」などで修業。88年34歳で東京に戻り、翌年「オーベルジーヌ」のシェフに就任しました。
そこで30年近く腕を振る舞い、数々のスペシャリテを生み出しました。閉店して、数年のブランクを経てから、今はシェフお一人で限られた予約客だけに料理を作っています。
アミューズ
生ハムのパイ包み。
生ハムとパイ生地を折り重ねて、こんがり熱々に焼いた一口のパイ包みから始まります。
Sancerre 2016 Bonnard
ワインは、シェフのおすすめで、サンセール。
ソーヴィニオンブラン特有の青苦みは少なく、すっきりとした甘みとミネラル感です。
バゲットは、代田橋のブーランジェリー・コンヴィヴァリテのもの。
天然酵母を使ったクラムの香りがいいパンです。
小滝シェフは昔は自家製パンも焼いていたそうです。
ズワイガニと根セロリのテリーヌ 蟹味噌のムース添え サラダ仕立て
ズワイガニの爪と根セロリ、そのジュレを重ねたテリーヌに、蟹味噌のムースを添えて。
蟹爪の甘みと根セロリの甘苦みに、ふんわりと濃厚な蟹味噌のムースをのせながら、葉野菜のサラダは甘みと酸味が利いたグリオットチェリーのドレッシング。ワインのサンセールがすすむ冷前菜です。
スープ・ド・トリュフ
黒トリュフの時期はもう終わりながらも、入荷が可能ならば作ってほしいとお願いしていたトリュフのスープ。もう最後だけど、マーブルが白から黄色に熟成したいい香りだよと。
3ミリほどの厚みのトリュフから、漂う官能的な香りがたまりません。
そして、薄いグレー色のトリュフのスープは、フォンブラン、柔らかくなるまで煮込んだゆり根のピュレとトリュフの皮や刻んだものを共に攪拌し、最後にクリームのフォン。中にはさっとスープの中で温めたレアで柔らかな帆立が入っています。
いいトリュフならそれだけで旨味が出る。「香りがあれば塩はいらない」と名言。
ブイヨンを使うとその雑味が出てしまい、せっかくのトリュフの旨味が損なうと。
確かにその通りですが、それゆえにこんなに旨味があるスープが出来るとは驚きの一品です。
ゆり根のほのかな甘みとトリュフの滋味が合わさり、そこに浮かべた厚みのあるトリュフの香りが充満。
正直帆立はなくてもいいくらいに澄んだ綺麗な旨味なのですが、ほくっとした厚みのあるトリュフの食感に、帆立の柔らかな食感の対比が、それぞれを引き立てるように。これが当時からのレシピなのです。そして、スープは熱々ではなく、やや低めの温度の方がトリュフの香りが引き立つので、そのスープが冷めないように、クリームの皮膜で覆い、香りとコクのまろやかさを出すのだそうです。
当時はジャガイモとトリュフを合せたりしたけれど、日本のジャガイモだと甘みもコクもない。で、ゆり根で試してみたところ、ゆり根の甘みがトリュフの持っているいろいろな特質を引き出してくれると。
この一皿には、非常に感動しました。次回は、トリュフの全盛期に是非また作ってもらいたい逸品です。
鱒のスフレ ペルノーのソース 菜の花のソテー添え
伊豆下田の海鱒のスフレは、そのすり身で鱒を包み、オーブン焼きして、ペルノーのソース。
菜の花のソテーを添えて。
ふわっと柔らかなクネルのような鱒のムースの中には、しっとりとした優しい味わいの鱒が。
ペルノーの香るバターソースが品のいいこと。ここにも余分な味を加えるフォンは使わないそうです。
いろいろ伺うとシェフは下戸でお酒は飲まないそうです。だからこそ、香りを引き立てる酒使いが上手いんですね。
Cabernet Sauvignion 2017 Les Jamelles
赤ワインは、次の肉料理のソースを煮込む時に使ったカベルネ・ソーヴィニヨンを合わせてくださいました。
ランド産小鳩のロティ
皮目をかりっと焼き、ぶりっとした弾力感の仔鳩。そして骨や内臓などを、フォンド・ヴォーと前者のワインなどでこっくりと煮込んでから漉したサルミソースの美味しいこと。
添えたホワイトアスパラガスのローストは、ミディアムに茹でてから焼くと水分が抜けずにしっとりと仕上がるそうです。絶妙なソースはパンで拭いながら、ワインを一飲み。幸せのひと時です。
ライムのシブースト
19世紀にパリで考案されたデセールをアレンジして。
カスタードクリームとゼラチン、メレンゲを合わせたムーステリーヌに、ライムの皮と砂糖をキャラメリゼしたライムソースをかけて。
甘いものが苦手だというシェフが作るデセールは、ライムの香りと酸味を活かし、甘いものが苦手な私もすっきりと食べられます。
ミニャルディーズ
フランボワーズのパート・ド・フリュイとガトーショコラ。
コーヒーはネスプレッソ。
食後は、シェフの修業時代のお話や今まで作ってきたスペシャリテの料理などのお話をいろいろ聞かせてもらいました。シェフの修業時代のお話はほんとに興味深く、こだわりの食材を使ったお料理もまたいろいろ頂きたいです。
「オーベルジーヌ」
東京都世田谷区北沢5−15−6 シャリマール北沢1F
03−6416−8200
ranmarun at 19:00│Comments(2)│
│フレンチ
この記事へのコメント
1. Posted by イタリア小僧 August 07, 2019 16:31
こちらのお店前から気になっていました。ロンさんが再訪されるくらいだから、クラッシックなフレンチを堪能できる貴重なレストランなんでしょうね。是非行ってみようと思います。前回のコメントはご容赦を。
2. Posted by ロン August 08, 2019 01:37
>>1
クラシックでありながら、余分なものをそぎ落とした軽い料理がとてもいいです。
シェフお一人でやっているので、堅苦しくない雰囲気もいいですし。
前回のコメントは、こちらこそ失礼いたしました。<m(__)m>
クラシックでありながら、余分なものをそぎ落とした軽い料理がとてもいいです。
シェフお一人でやっているので、堅苦しくない雰囲気もいいですし。
前回のコメントは、こちらこそ失礼いたしました。<m(__)m>