デコ
August 26, 2016
ラチュレ@渋谷
「LATURE ラチュレ」に行きました。
以前渋谷にあった「Deco」はオーナーとの契約満期にて閉店。
そして、シェフの室田さんが、晴れて独立して8月中旬にオープンしたお店です。
Deco時代からジビエ料理をはじめ、クラシックなフレンチを作る若手のシェフとして絶賛していました。
7年前から猟銃の免許を持ち、休みの日は自ら野生の森へと足を運び狩りをする、そして猟師仲間たちと獲ったものを熟成させ、その動物がどういう環境でどういう餌を食べてきたかを考えながら、食材を組み合わせて調理する。
時には、駆除目的で獲られ処分されていた琉球孔雀などを、美味しく食べさせてくださったり、たまたま獲れてしまったという珍しいものを頂いたこともありました。そんなシェフの新店をオープン前から楽しみにしていました。
「LATURE」とは、室田シェフが作った造語で、「自然の雫」という意味だそうです。
(以下抜粋)早朝の霧立つ森の木葉に集まり大地に滴る朝露。優しく焼き上げた塊を切った時に滲み出る肉汁。
広大な土地で厳しい環境に耐え毎年力強く育つ葡萄の果汁。もぎたての野菜や果物を頬張った時に口から溢れる水分・・・・・・私達が生活している中に「自然の雫」は至る所に存在します。
そして、日々進化して便利になっていく現代社会において、食している物は全て自然からの恵みだという事、地球の奇跡ともいえる自然に敬意と感謝を忘れる事なくフランス料理で表現し、皆様に最高の「おもてなし」を提供したいと考えております。
位置皿は、ガラスを張った木のプレートで、中にはAリーフという月桂樹に似た葉が入っています。
季節に合わせた雰囲気を演出するため、いろいろアレンジしていきたいそうです。
Saint Aubin 1er Cru La Chateniere 2012 Marc Colin
ワインは、マルク・コランのサントーバン。
すっきりとした酸とミネラル感から徐々に表れるバタリーな香りと甘みで、角がなくするっとなめらかな口あたりです。
マカロン
鹿の血を使ったマカロンで、中には鹿のブータンノワールが入っています。
鹿の血は卵白のように固まるので、卵白の代わりに入れたそうです。
甘くてほろ苦いマカロンでスタート。
下に敷いてあるのは、夏鹿の毛皮です。思ったよりも毛足が長くふかふかなのに驚きました。
鹿の血は今まで捨ててきたそうですが、こうやって利用できるのを知り、そして、これも自然の雫であると。
彼のコンセプトが最初から伝わってくる一品でした。
茸のタルト
次の演出は、茸の辞典をイメージした箱がでてきます。
中を開けると、薄いタルト生地の上に、本州猪の自家製ベーコンとジロール茸のソテーがのせられています。
こういう凝った演出がまた素敵です。そして、食べて美味しい。
キジバトのスフレ
沖縄のキジバトを1週間熟成させて、そのピュレと泡立てた卵を使って焼いたスフレ。
こんがりと膨らんだスフレは、中はしっとりと柔らかく軽い食感。
底に残るキジバトの濃厚なエキスまでしっかり頂きました。
高麗キジのコンソメ
藁を入れたガラスの器に注がれるのは、1か月熟成させた沖縄の高麗キジのコンソメ。
中には、山梨で採れた茸がいろいろ入っています。
茸は、ショウゲンジというシメジに似たもの、タマゴタケ、ヌメリイグチタケ。
黄金色に輝くコンソメは、熟成したキジの旨みと香りが品良く口内を漂います。
シェフはいつも、ほんと綺麗にその素材の持ち味を生かしたコンソメをひくんですよね。
パンは群馬の桐生工房のパン。
バターナイフも雉のような形をしています。特注で作ってもらったそうです。
鯵と桃のマリネ
山口の瀬つき鯵と桃のスライスに、バジルとホエイのソース。
瀬つき鯵は、回遊性のある鯵と違い、瀬に居ついているためエサをたっぷり食べて脂がのって肉厚なのが特徴。体はやや黄色がかっているので、地元では黄あじとも呼ばれます。
そんな鯵は、桃の甘みとバジルとホエイ(乳清)の酸味のあるソースでさっぱりと食べさせてくれます。
パテ・アンクルート
蝦夷鹿、猪、ヒグマを熟成させたミンチ肉にフォアグラやピスタチオを入れたパテ。
しっかり焼きあがったサクサクのパイ生地の間に入れた鹿のコンソメジュレ。
そこには一ミリの隙間もなく、しっとりと焼きあがったパテ。それぞれの個性ある四足肉の綺麗な旨みだけを凝縮させた肉質とジュレと生地との一体感があります。
添えてあるのは、プラムと無花果、沖縄の赤うりのピクルス。
パテ・アンクルートというフランスのクラシックなシンボル的な料理ですが、いかに美味しく作るか。
コンソメと同様に料理人の力量が計れる一品でありながら、その完成度を求めるとなかなか感動する出逢いがないのですが、シェフが作るパテ・アンクルートはその材料を毎度変えながらも、その度感動させてくれます。
美味しいっていう言葉も端的で、何がどう美味しいとかうまみや塩加減がどうとか言ったらキリがないのですが、
最後は食べ終えてからもっと食べたくなるという欲求が大事なのかもしれません。このパテアンクルートは、ハーフでなくフルポーションで食べたいと思ったし、でも今日はこれだけだよね、まだ他の料理も出るしね、しっかり味わおうと思って食べた後の余韻も長い。
Cote Rotie Cuvee du Plessy 2011 Gilles Barge
パテ・アンクルートで赤ワインが欲しくなったのですが、飲みたかったブルゴーニュは売り切れでボルドーかなと思ったけど、おすすめので。
シラーにほんの少し入ったヴィオニエ。シラー系はよっぽど濃い肉質の料理でない限り、そんなに好みじゃないけど比較的和らいだ印象でした。
鮎のパイ包み
和歌山紀ノ川の天然鮎のパイ包み。
鮎の肝のブールブランソース。つるむらさきを添えて。
三枚おろしした鮎と、岩海苔、鮎と帆立のすり身のムースをつなぎにして焼き上げてあります。
これまた完璧なパイ包み。鮎はもう旬を過ぎていて旨みが少ないので、つなぎに帆立のすり身を入れましたと。
それでも鮎の身は何尾使っているんでしょうというくらいぎっしり詰まっています。
そして、ブールブランソースの美味しいこと。フレンチやイタリアンでも鮎というと肝を前面に出したソースを合わせることが多いですが、こちらでは鮎の味を大切にしながらも、ちゃんと抑制をきかせています。
メインのお肉用のナイフは、新潟燕三条の刃物工房藤次郎と箸造りのマルナオがコラボした黒檀の柄を使った脇刺しのような鋭いナイフ。美しい波紋が広がるそこには、LATUREの刻印が。
安全上のため、包丁としての刃付けはしていないそうですがテーブルナイフとしての機能性では、かなり切れるナイフだと思います。
小熊のロースト
メインで出てきたお肉は、新潟で獲れたという月の輪熊の小熊をローストして。
手前は腿肉。左がロースで、その下はハツです。
添えてあるのは、茄子にクミンを利かせたピュレに、バナナピーマンと素麺カボチャ、赤カブ、黒トリュフ、乾燥させた蓬など。
まだ1歳に満たないそうですが、ロース肉は脂身が分厚く、赤身の部分も弾力がしっかりあります。
熊のハツは初めて食べましたが、しゃきっとした歯ごたえでクセもないです。よく切れるナイフが活躍しました。
チョコレートのミルフィーユ
デセールは女性のパティシエールが作っています。
カカオとマタギ茶のチュイル、マタギ茶のアイスクリームとクリーム、、アーモンドクランチ、胡桃のブラウニーが重なったミルフィーユ仕立てになっています。
マタギ茶というのは、猟師が狩りをした時に、黒文字の枝に刺して肉を焼いたり、黒文字の枝や葉を煎じてお茶を作って飲んでいるというエピソードから作ったそうです。
チョコレートの甘さとマタギ茶の焙じ茶に似た苦味やシナモンのような香りが、ナッツの香ばしさともに折り重なっています。持つとずっしりと重い器も特注で作ってもらったそうですが、一枚ごとに岩肌のような風合いが異なり、存在感があります。
クマンシェ
コルクの樹皮にのっているのは、バターの代わりにヒグマの熊の脂を使って焼いたというフィナンシェもといクマンシェ。熊の脂は、融点が低くさらっとしているので、バターよりもヘルシーかつ高価で貴重なもの。皮膚に塗ると乾燥やあかぎれ、日焼けや火傷、虫よけなどにも利くんですよ。
奥の席は、カーテンで仕切れるようにも設計されていて、団体の個室のように利用することも可能だそうです。
今まで獲ってきた雉や孔雀やヤマドリの羽をアレンジしたモチーフやウサギを象ったオブジェも可愛いです。
レストルームには、古い猟銃も置かれていました。
ちょっとガラスが反射してしまいましたが、奥のテラス窓からは、枝を集めて作った鹿のオブジェもありました。
こうして、再び歩んでいくシェフの1ページが開きました。
これから秋になり、ジビエやいろんな食材がでてきます。またいろんな形で、自然の雫を表現してくれる室田シェフのお料理を楽しみにしています。
「LATURE」
東京都渋谷区渋谷2−2−2 青山ルカビルB1F
03−6450−4646
以前渋谷にあった「Deco」はオーナーとの契約満期にて閉店。
そして、シェフの室田さんが、晴れて独立して8月中旬にオープンしたお店です。
Deco時代からジビエ料理をはじめ、クラシックなフレンチを作る若手のシェフとして絶賛していました。
7年前から猟銃の免許を持ち、休みの日は自ら野生の森へと足を運び狩りをする、そして猟師仲間たちと獲ったものを熟成させ、その動物がどういう環境でどういう餌を食べてきたかを考えながら、食材を組み合わせて調理する。
時には、駆除目的で獲られ処分されていた琉球孔雀などを、美味しく食べさせてくださったり、たまたま獲れてしまったという珍しいものを頂いたこともありました。そんなシェフの新店をオープン前から楽しみにしていました。
「LATURE」とは、室田シェフが作った造語で、「自然の雫」という意味だそうです。
(以下抜粋)早朝の霧立つ森の木葉に集まり大地に滴る朝露。優しく焼き上げた塊を切った時に滲み出る肉汁。
広大な土地で厳しい環境に耐え毎年力強く育つ葡萄の果汁。もぎたての野菜や果物を頬張った時に口から溢れる水分・・・・・・私達が生活している中に「自然の雫」は至る所に存在します。
そして、日々進化して便利になっていく現代社会において、食している物は全て自然からの恵みだという事、地球の奇跡ともいえる自然に敬意と感謝を忘れる事なくフランス料理で表現し、皆様に最高の「おもてなし」を提供したいと考えております。
位置皿は、ガラスを張った木のプレートで、中にはAリーフという月桂樹に似た葉が入っています。
季節に合わせた雰囲気を演出するため、いろいろアレンジしていきたいそうです。
Saint Aubin 1er Cru La Chateniere 2012 Marc Colin
ワインは、マルク・コランのサントーバン。
すっきりとした酸とミネラル感から徐々に表れるバタリーな香りと甘みで、角がなくするっとなめらかな口あたりです。
マカロン
鹿の血を使ったマカロンで、中には鹿のブータンノワールが入っています。
鹿の血は卵白のように固まるので、卵白の代わりに入れたそうです。
甘くてほろ苦いマカロンでスタート。
下に敷いてあるのは、夏鹿の毛皮です。思ったよりも毛足が長くふかふかなのに驚きました。
鹿の血は今まで捨ててきたそうですが、こうやって利用できるのを知り、そして、これも自然の雫であると。
彼のコンセプトが最初から伝わってくる一品でした。
茸のタルト
次の演出は、茸の辞典をイメージした箱がでてきます。
中を開けると、薄いタルト生地の上に、本州猪の自家製ベーコンとジロール茸のソテーがのせられています。
こういう凝った演出がまた素敵です。そして、食べて美味しい。
キジバトのスフレ
沖縄のキジバトを1週間熟成させて、そのピュレと泡立てた卵を使って焼いたスフレ。
こんがりと膨らんだスフレは、中はしっとりと柔らかく軽い食感。
底に残るキジバトの濃厚なエキスまでしっかり頂きました。
高麗キジのコンソメ
藁を入れたガラスの器に注がれるのは、1か月熟成させた沖縄の高麗キジのコンソメ。
中には、山梨で採れた茸がいろいろ入っています。
茸は、ショウゲンジというシメジに似たもの、タマゴタケ、ヌメリイグチタケ。
黄金色に輝くコンソメは、熟成したキジの旨みと香りが品良く口内を漂います。
シェフはいつも、ほんと綺麗にその素材の持ち味を生かしたコンソメをひくんですよね。
パンは群馬の桐生工房のパン。
バターナイフも雉のような形をしています。特注で作ってもらったそうです。
鯵と桃のマリネ
山口の瀬つき鯵と桃のスライスに、バジルとホエイのソース。
瀬つき鯵は、回遊性のある鯵と違い、瀬に居ついているためエサをたっぷり食べて脂がのって肉厚なのが特徴。体はやや黄色がかっているので、地元では黄あじとも呼ばれます。
そんな鯵は、桃の甘みとバジルとホエイ(乳清)の酸味のあるソースでさっぱりと食べさせてくれます。
パテ・アンクルート
蝦夷鹿、猪、ヒグマを熟成させたミンチ肉にフォアグラやピスタチオを入れたパテ。
しっかり焼きあがったサクサクのパイ生地の間に入れた鹿のコンソメジュレ。
そこには一ミリの隙間もなく、しっとりと焼きあがったパテ。それぞれの個性ある四足肉の綺麗な旨みだけを凝縮させた肉質とジュレと生地との一体感があります。
添えてあるのは、プラムと無花果、沖縄の赤うりのピクルス。
パテ・アンクルートというフランスのクラシックなシンボル的な料理ですが、いかに美味しく作るか。
コンソメと同様に料理人の力量が計れる一品でありながら、その完成度を求めるとなかなか感動する出逢いがないのですが、シェフが作るパテ・アンクルートはその材料を毎度変えながらも、その度感動させてくれます。
美味しいっていう言葉も端的で、何がどう美味しいとかうまみや塩加減がどうとか言ったらキリがないのですが、
最後は食べ終えてからもっと食べたくなるという欲求が大事なのかもしれません。このパテアンクルートは、ハーフでなくフルポーションで食べたいと思ったし、でも今日はこれだけだよね、まだ他の料理も出るしね、しっかり味わおうと思って食べた後の余韻も長い。
Cote Rotie Cuvee du Plessy 2011 Gilles Barge
パテ・アンクルートで赤ワインが欲しくなったのですが、飲みたかったブルゴーニュは売り切れでボルドーかなと思ったけど、おすすめので。
シラーにほんの少し入ったヴィオニエ。シラー系はよっぽど濃い肉質の料理でない限り、そんなに好みじゃないけど比較的和らいだ印象でした。
鮎のパイ包み
和歌山紀ノ川の天然鮎のパイ包み。
鮎の肝のブールブランソース。つるむらさきを添えて。
三枚おろしした鮎と、岩海苔、鮎と帆立のすり身のムースをつなぎにして焼き上げてあります。
これまた完璧なパイ包み。鮎はもう旬を過ぎていて旨みが少ないので、つなぎに帆立のすり身を入れましたと。
それでも鮎の身は何尾使っているんでしょうというくらいぎっしり詰まっています。
そして、ブールブランソースの美味しいこと。フレンチやイタリアンでも鮎というと肝を前面に出したソースを合わせることが多いですが、こちらでは鮎の味を大切にしながらも、ちゃんと抑制をきかせています。
メインのお肉用のナイフは、新潟燕三条の刃物工房藤次郎と箸造りのマルナオがコラボした黒檀の柄を使った脇刺しのような鋭いナイフ。美しい波紋が広がるそこには、LATUREの刻印が。
安全上のため、包丁としての刃付けはしていないそうですがテーブルナイフとしての機能性では、かなり切れるナイフだと思います。
小熊のロースト
メインで出てきたお肉は、新潟で獲れたという月の輪熊の小熊をローストして。
手前は腿肉。左がロースで、その下はハツです。
添えてあるのは、茄子にクミンを利かせたピュレに、バナナピーマンと素麺カボチャ、赤カブ、黒トリュフ、乾燥させた蓬など。
まだ1歳に満たないそうですが、ロース肉は脂身が分厚く、赤身の部分も弾力がしっかりあります。
熊のハツは初めて食べましたが、しゃきっとした歯ごたえでクセもないです。よく切れるナイフが活躍しました。
チョコレートのミルフィーユ
デセールは女性のパティシエールが作っています。
カカオとマタギ茶のチュイル、マタギ茶のアイスクリームとクリーム、、アーモンドクランチ、胡桃のブラウニーが重なったミルフィーユ仕立てになっています。
マタギ茶というのは、猟師が狩りをした時に、黒文字の枝に刺して肉を焼いたり、黒文字の枝や葉を煎じてお茶を作って飲んでいるというエピソードから作ったそうです。
チョコレートの甘さとマタギ茶の焙じ茶に似た苦味やシナモンのような香りが、ナッツの香ばしさともに折り重なっています。持つとずっしりと重い器も特注で作ってもらったそうですが、一枚ごとに岩肌のような風合いが異なり、存在感があります。
クマンシェ
コルクの樹皮にのっているのは、バターの代わりにヒグマの熊の脂を使って焼いたというフィナンシェもといクマンシェ。熊の脂は、融点が低くさらっとしているので、バターよりもヘルシーかつ高価で貴重なもの。皮膚に塗ると乾燥やあかぎれ、日焼けや火傷、虫よけなどにも利くんですよ。
奥の席は、カーテンで仕切れるようにも設計されていて、団体の個室のように利用することも可能だそうです。
今まで獲ってきた雉や孔雀やヤマドリの羽をアレンジしたモチーフやウサギを象ったオブジェも可愛いです。
レストルームには、古い猟銃も置かれていました。
ちょっとガラスが反射してしまいましたが、奥のテラス窓からは、枝を集めて作った鹿のオブジェもありました。
こうして、再び歩んでいくシェフの1ページが開きました。
これから秋になり、ジビエやいろんな食材がでてきます。またいろんな形で、自然の雫を表現してくれる室田シェフのお料理を楽しみにしています。
「LATURE」
東京都渋谷区渋谷2−2−2 青山ルカビルB1F
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